青汁

スケプトイド #06
2006 年 11 月 9 日

先日わたしはパイナップル・スムージーを昼食にしようと思って買いに行った時に、青汁の効果を絶賛するポスターを見かけた。まるでキリストの再来かのように人々が青汁について話しているのを聞いたことがある以外、わたしは青汁について良く知らなかった。興味があったのでポスターを読んでみた。

みなさん、このポスターに印刷された多くのクソを正当化するのに十分な表現は英語という言語に存在しない。もし平均的な人がこのポスターの半分でも真剣にとらえられるとしたら、一般大衆の無知さとだまされやすさはわたしが思っていたよりかなりひどいということになる。

そのポスターには青汁に豊富に含まれていると言う葉緑素を中心にした主張がいくつか挙げられている。ご存知の通り、葉緑素は植物が太陽からの放射を利用して空気中の二酸化炭素と土の中の水を化学反応させてタンパク質と糖分を生成するのに使われて、その副産物として酸素が放出される。人間や動物は、驚くことではないが、そんなことはしない。人間は食べ物からタンパク質や糖分を摂取する。われわれ人間の体には葉緑素は特に必要ないのである。

わたしは青汁が不健康だとか体に悪いと言っているわけではない。おそらく青汁は他のどの植物から作るジュースと同じだろう。青汁が適切な野菜くらいに高い栄養価値があるとは思わない。青汁が体に悪いとも思わない。ところが、青汁の支持者は単に青汁が健康だと言っているわけではない。彼らは青汁が直すというあやふやな病状と青汁がもたらす様々な効用のあまりにもいい加減なリストを作り上げている。それらの主張はすべて根拠がないので、少なくとも非現実的な主張なので、この製品には懐疑的に接するべきである。いくつかの主張を見てみよう。

“葉緑素を含むすべての緑色植物がそうであるように、青汁の原料である小麦芽には多くの酸素が含まれている。脳は高い酸素状態で最適に機能する。”

脳への酸素供給を断てば脳が最適に機能しないことは真実だが、葉緑素が良い酸素源であるというのはウソである。あなたには葉っぱは生えてないので、酸素供給に関しては自分の肺に依存することをお勧めする。どんな種類の葉緑素でもほんのわずかな酸素が含まれているだけである。葉緑素は炭水化物なので圧倒的に炭素と水素で構成されている。その分子は約127個の水素と炭素原子、たったの5個か6個の酸素原子、4個の窒素原子、1個のマグネシウム原子で構成されている。これは、葉緑素に多く含まれるマグネシウムが性ホルモンを回復させる酵素を作るという主張もウソであることを示している。おもしろいことに、酵素はタンパク質で、タンパク質はアミノ酸でできていて、アミノ酸にはマグネシウムはまったく含まれていないのである。1個のマグネシウム原子が性ホルモンを回復させるかどうか知らないし、その意味もわからないが、もし本当だとしたら大した原子である。マグネシウムが欲しかったらビタミン剤を飲みなさい。酸素が欲しかったら一呼吸しなさい。性ホルモンが欲しかったら、ガールフレンドを作りなさい。

“青汁は、リンパ系を洗浄する、血を作って、体のバランスを回復して、有毒な金属を細胞から取り除いて、肝臓と腎臓に栄養を与えて、生命力を回復させることが証明されている。”

文法上の間違いはポスターからのもので、わたしの間違いではない。一つずつ取り上げるとする。第一に、これらのことが“証明された”という主張。“バランスを回復する”とか“血を作る”とか、あやふやな表現を使っていることに注目して欲しい。これは意図的なのである。もし具体的に説明すしてしまうと、FDA(訳注:米国食品医薬品局)から罰を受けるからだ。診断、緩和、処置、治癒、または予防するのを目的とした製品で、テストされてない、つまり規制されてないとすると、法律 (21 U.S.C. 343(r)(6)) に違反することになる。青汁の人たちはもちろん実際に彼らの製品を特定の病気に対してテストさせるわけにはいかない。テストはもちろんうまくいかないからだ。したがって、彼らは“血を作る”とか“バランスを回復する”とかあやふやでテスト不可能な主張をすることになるのである。

小麦芽を摂取することによって細胞内の有毒な金属量を低下させることに関しては、わたしはこれを支持する研究を1つも見つけることができなかった。小麦芽は地中の亜鉛とカドミウムを根から吸収しやすいこと示す研究を見つけた。つまり小麦芽はそれらの金属で汚染されている可能性の方が高いということである。有毒な金属量を低下させることが重要だと思うなら、小麦芽を摂取することを考え直した方がいいだろう。もちろん、これはそもそも有毒な金属があなたの体内にあることを前提にしている。このそもそも異常な病気のために青汁のようないんちきな治療法を追求する前に、まずは有毒な金属が実際に体内にあるのかどうか医学の専門家に見てもらいなさい。製品を売りたいと思っている健康食品屋のオーナーが言っているからという理由だけで判断するべきではない。有毒金属を摂取したくなかったら、鉛を含むペンキで塗られた窓敷居をかじるのをやめるべきである。

“人間を維持するのに必要な B12 を含むほとんどのビタミンとミネラルが青汁には含まれている。”

これはとても響きがいい。しかし、わたしがそのポスターから目をそらして、そのお店に掲示してある栄養表示を見ると、響きが良くなくなる。2オンス(約60cc)の青汁に含まれるビタミンというと、1日の接収量の 15% のビタミンCと 20% の鉄だけである。“B12”とその他のビタミンやミネラルが含まれているか? 表の一番したまで全部ゼロである。つまり、一杯の青汁には原始家族フリントストーンの(訳注:子供用の)ビタミン剤一錠よりもはるかに少ない栄養価値しかないのである。

青汁の科学的なテスト結果があるなら歓迎する。青汁の効用の1つを取り上げて本当のテストで立証することを青汁の支持者に挑戦する。わたしが言ってるテストは、エネルギー・フィールドによって元気づけられたヒッピーからのレポートではない。実際に病気のある人々が信じて結果的に重要な医学的治療を受けなくなるような、例えば青汁は高血圧を抑えるという主張である。これは本物のピアレビューされる二重盲検法の臨床試験で簡単にテストできる。青汁の支持者はおそらくそれなりの理由があってそのようなテストをしてないことに注目して欲しい。とんでもない主張には懐疑的に接して欲しい。特に立証されていないか立証できない主張については。

わたしはパイナップル・バナナ・スムージーを相変わらず楽しむことにする。青汁も蜂花粉もジンセン・エキスも必要ない。

Brian Dunning
ブライアン・ダニング

参考
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