ロッド:空飛ぶばかげた話

スケプトイド #03
2006 年 10 月 19 日

未確認生物学のファイルの中から、今日は地球の幽冥界に生息する不思議で神秘的な生きる UFO である“ロッド”を見てみよう。

ロッドとは、数センチから数メートルの長さで人間の目には見えないがフィルムやデジタルまたは静止画や動画に関わらずカメラには写るという空飛ぶ生き物であると言われている。体は細長い棒のような形をしていて、唯一の付属器官は片側に一つずつ体の先端から後端まである波打った翼だけ。うなぎが水中を泳ぐようにその翼を波立たせて空気中を移動する。

ホセ・エスカミーヤという名前の紳士はロッドの発見者だと主張している。彼のウェブサイト Roswellrods.com で、1994 年に彼が最初にロッドをビデオに撮ったと言っている。彼は UFO を撮影している時に偶然ロッドも撮影したと言っている。エスカミーヤさんは撮影中にそのような物を直接見た記憶はないので、彼のビデオに関する最もありえそうな説明は人間の目には見えないがフィルムやビデオだけに現れる空飛ぶ生物の新種を発見したのだと彼は決心した。

それ以来、ロッドが写っていると主張する数え切れないほどの写真やビデオが明るみに出てきた。インターネットで検索すれば、何百ものロッドを見つけることができる。

もしロッドが至る所に存在するのだとしたら、彼らの存在はなぜ一般に認められないのか? ロッドの存在を正当化するには、4つの基本的な主張を証明するか少なくとも合理的であることを示す必要がある:

  1. 長さ1メートルにも及ぶ未発見の昆虫の存在を説明するための動物学が必要である。新種は頻繁に発見されるので、われわれはこれを認めるとしよう。長さ1メートルにも及ぶ未発見の空飛ぶ生き物が存在することはもちろん可能なのだ。
  2. 長さ1メートルにも及びおそらく幅も何センチになるにも関わらず、人間の目には見えない生き物が存在するということを認めるなくてはいけない。微生物を除くとして、何種かのクラゲにある透明以上の物は自然界に存在しない。透明とは目に見えないことではない。動物界において人間の目に見えない生物が可能であることをロッド支持者は証明していない。
  3. 肉眼では見ることができないが様々な可視光カメラの機種による出力によって画像を見ることができなければならない。カメラが画像を最終的にフィルムや紙やテレビ画面などのメディアに出力する時に、人間の目は記録されて出力される可視光を見ることができるのでわれわれはその画像を見ることができる。普通のカメラはサーモグラフやその他の非可視光カメラ技術を使ってないので、ロッド支持者はそもそもそんな機能はない全ての普通のカメラが非可視光を可視光に影響を与えることなく可視光に変換することができることを証明する必要がある。それが証明されない限り、カメラには見えるが写真やビデオを撮る人には見えないということが可能であることを合理的に認めることはできない。
  4. たとえ上記のすべてが立証されたとしても、よりありえそうな説明がないことも必要である。もし、単純な方法でロッドの出現を簡単にカメラで撮影することができるなら、捜索が必要な現象であることを確立したことにすらならない。

ご想像の通り、他の説明がある。しかも、単純な手法でロッドが写ってる写真を撮ることができる。太陽を背にして、例えば洞穴のように暗い場所を向いてるところを想像して欲しい。トンボ(または他の虫)が辺りを時速20マイル(約時速30キロメートル)で飛び回っているとする(トンボは時速60マイルで飛ぶこともできる)。ここで、一般的なシャッタースピードである30分の1秒で写真を撮るとする。この時、トンボは約12インチ(約30センチ)飛ぶことになる。カメラの露出は暗い背景に合わせてあるので、トンボが飛んだ軌跡は露出過度になって真っ白に写る。トンボはその間一度羽ばたくことになる(昆虫によっては30分の1秒間に20回羽ばたくものもいる)。したがって、トンボの翼の先端が長さ12インチの正弦波1周期として写る。トンボの体の長さ12インチの棒状の軌跡の両側に正弦波が写ることになる。

この現象はあまりにも頻繁に起こるので、同じような状況で野外で写真やビデオを撮った経験のあるほとんどのプロ写真家がそれに悩まされたことを教えてくれるだろう。それにもかかわらず、写真の基本をよく知らない人は、写真に写っているものは実際に波打つ翼がついてて長さ12インチだと考えてしまう。また、写真を撮った人が肉眼では長さ12インチの空飛ぶ生き物は見なかったという証言は実際に正しい。

結論としては、ロッドはよく知られていて一般に認められていてよく理解されている写真撮影による副産物なのである。ロッドはカメラでしか見ることができない未知で目に見えない生き物であるというロッド支持者の説明は、目に見えないことや写真撮影に関してかなり乱暴な主張を必要とする。それが証明されるか、ロッドを実際に捕獲して研究することができるようになるまで、そのようなものが存在するのではないかと思う理由はないのである。

Brian Dunning
ブライアン・ダニング

参考
© 2009 Skeptoid.com

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