SUV 恐怖症スケプトイド #15 |
最近流行の地球温暖化の責任を押し付けるための悪人探しに少し時間をさいてみよう。今週のわたしのお気に入りは燃費が悪くオゾンを破壊し非倫理的で政治的に正しくないナチスのサッカー家族のワゴン車である悪党 SUV である。ただし、最近の流行の方法ではなく、懐疑的な目でこの問題を見てみよう。
意見の一致を見つけることから始めよう。ほとんどの人が賛成するいくつかの一般論がある。第一に、車の燃料効率性は良いことであるという前提。効率の良さが常にゴールであることに反対する人はおそらく極めて少ないだろう。第二に、重い車は一般的に燃料効率が悪いので軽い車が一般的には良いことであるという前提。余計な重量は余計な燃料を消費する。車は不必要に重いべきではない。第三に、重い小型トラックを元に作られた SUV は軽量の乗用車に比べて一般的に重くて燃料効率が悪い。
あなたが上記のすべてに賛成することを前提に話を進めることにする。これらの一般論の一部を元に、いわゆる環境保護団体は SUV に反対する法律のために議員に働きかけている。そのような法律には懐疑的になることを勧めたい。一般論を元に法律を作ることの問題は、例外が不当に罰せられて、いくらかの有罪犯が法律から逃れてしまうからだ。SUV に反対するどんな法律も悪い法律である。以下に理由を述べる。
ほとんどすべてのいわゆる SUV は機械的には通常の車と同じである。車高を高くしてアップライトなスタイルで SUV として売られているだけで、重さと経済性とパフォーマンスは元になった車と一般的には同様である。トヨタのハイランダー(訳注:日本での車名はクルーガー)とレクサス RX シリーズはトヨタ・カムリのシャーシと部品から作られている。ホンダ CRV とエレメント SUV はホンダ・シビックを元に作られている。トヨタ・マトリックスとポンティアック・バイブはトヨタ・カローラのボディを変更して作られた。ヒュンダイ・ツーソン、サンタ・フェ、キア・スポーテッジ SUV はヒュンダイ・エラントラとソナタのセダンを元に作られている。アキュラ MDX とホンダ・パイロット SUV は単にホンダ・アコードの上に車高の高い鉄板を載せてあるだけなのである。人々は重い金属や丈夫な機械部分など必要なくて、単に見た目のスタイルや人や荷物を運ぶのにもっと便利な形が欲しいだけなのである。それは良しとしよう。
例えば軍用ハンヴィーは今は一般消費者にジェネラル・モーターから H1 ハマーとして売られている(訳注:H1 はすでに製造中止されている)。H1 にはポータル・アクセルとインボード・ブレーキが搭載されている。ほとんどの人はその二つが何なのか知らないが、通常の SUV とは劇的に構造的な違いがあることを意味する。GM のエンジニアはそれが実用的な車ではないことを知っているが、人々は大きくてたくましい軍用車を買いたいのである。お客さんをがっかりさせたくないので、彼らは在来のユーコン/タホ/エスカレードに何となくハンヴィーのような車体を載せて現在 H2 ハマーとして売っている。ほとんどの人は、GM の思い通りに、それが新しく改善された軍用車の系統を継ぐ第二世代のハンヴィーだと勘違いする。しかしほとんどの消費者はそれを知らないか、そんなことはぜんぜん構わないのである。H1 と H2 に共通する部品は一つもない。その二つはデザインの基本がそもそも正反対なのである。一つは軍用トラック、もう一つは形だけの外装がある乗用車である。人々がハンヴィーを運転していると信じたいのを GM は知っていたので、ハンヴィーを製造元で軍下請け業者の AM ジェネラルからハマーの名称をライセンス契約をしようとしたが AM ジェネラルは断った。GM はもっと H2 が売れるようにハマーの名称を入手したいためだけの理由で AM ジェネラル社全体を買収しなければならなかった。GM は H2 ハマーを機械的に同様のユーコンやタホの二倍の値段で売ることができるのでそれは充分見返りのある投資だった。そして消費者は軍用トラックを運転していると最高に幸福に信じているのである。これはマーケティングの名前の付け方になぜ懐疑的になるべきかという例の一つである。
人々は SUV を罰するか禁止してロス・アンジェルスのスモッグを減らることを話題にする。ロングビーチ港に入ってくる一隻のコンテナ船が30万台の車に相当する二酸化炭素ガスを排気するということをあなたは知っているか? 船は排気ガス法の対象ではない。なぜ対象にしないのか? ほとんどは在来の車と機械的にも経済的にも同様の SUV は本当に排気ガス削減の論理的な標的なのか? SUV は二酸化炭素問題の原因ではない。すべての排気ガス法に従わなければいけない H2 ハマーを含むどんな乗用車も特に10年前の平均的な車に比べて極めて環境にやさしい。
パリとロンドンの二つの市は SUV に対して本当に厳しくなって市街に入ることに罰金を課している。その主張としては、SUV は燃費が悪いだけではなくて駐車するのに大きすぎるし危険すぎるということだ。ここで思いだして欲しいのは、SUV という言葉は見た目がある特定の形を示しているだけなのだ。SUV ではない燃費の悪い車は他にもいくらでもある。多くの SUV より長い車も他にいくらでもある。SUV と同じくらい車高が高くて重くて衝突時の損害を与えるくるまは他にいくらでもある。SUV はおそらくそれら三つの特徴のリストに頻繁に現れるとはいえ、ある特定の形の車だという理由だけで SUV を非難の的にするのは間違っている。燃費の悪い車を禁止しろ。または、長くて駐車できない車を禁止しろ。または、衝突試験の評価が悪い車を禁止しろ。または、その三つすべてを禁止しろ。しかし、見かけ上の車の形を攻撃しても何の解決にもならない。ならなぜ政治家はそういう法律を作るのか? 彼らは事実がなんだろうと構わないのである。彼らは投票者の感情に訴えることに気をかけるのである。悪党の SUV を禁止すると、無知な一般大衆の感情を満足させられるということだ。もしあなたが無知でないなら、それに賛成すべきではない。事実に注目しろと政治家に対して要求すべきだ。(余計なお世話はせずに、何が人々に取って大事であるべきかを法律にしようとするのもやめて欲しい。これは別の話としてまたの時に取り上げるとする。)
他にも問題点がある。トヨタ・プリウスやホンダ・インサイトなどのハイブリッド車は効率と経済性の基準をかなり高くした。それによって、ハイブリッド車は燃費が良いという一般的な印象ができた。一般的にはそれは正しいが、例外はある。レクサス RX ハイブリッド SUV はハイブリッドではない RX とまったく同じ V6 エンジンを使っているので、燃費も似たような数字が掲示されている。わたしは消費者テストで発売前に両方の車を運転した。RX ハイブリッドの場合、ハイブリッド・システムは単に加速時に力を足すために使われる。ハイブリッド車に期待される改善されるべき燃費はバッテリーと電気モーターの重さによって、特に高速道路で、帳消しにされる。レクサス GS は同じ考え方をハイエンド高級セダンに使った例になる。さらに、多くのハイエンド・スポーツ車メーカーも電気モーターで加速を良くするためのハイブリッドの試作品をテストしている。つまり、ハイブリッドは経済性が改善されて排気ガスがきれいにするとは限らないのである。“ハイブリッド”や“SUV”などの名前に気を取られずに、その車に掲示されている実際の燃費の数字に注目すべきである。
わたしが思いつく最初の例としては、わたしの 2004 アウディ S4、4ドア・セダン、の燃費は15マイル/ガロン(訳注:約 6.4 km/L)である。それはわたしの妻の V8 エンジン付きの 2006 トヨタ・フォーランナー(訳注:日本ではハイラックスサーフ)の燃費16マイル/ガロン(訳注:約 6.8 km/L)より悪い。いわゆる環境保護団体はどっちの車に対して抗議しているか? 普通のセダンか、それとも SUV か? 彼らは頭がいい。セダンに対して抗議しても誰の神経もつつかない。悪党の SUV に対する人騒がせな警告で一般大衆を怖がらせる方が簡単なのだ。まとめると、反 SUV 運動と法律は非生産的であるだけでなく事実上間違っているということだ。有効なテストのデータではなく、マーケティングのもっともらしい専門用語や名前を耳にしたら、懐疑的になりなさい。
参考
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