持続可能な持続可能性

スケプトイド #05
2006 年 11 月 1 日

スケプトイドが持続可能なあなたの耳に持続可能なネットワークを使って持続可能なインターネット経由で届けられる持続可能なポッドキャストだったとは知らなかった人が多いと思う。とはいえ、今年の意味のない使われ過ぎの流行言葉賞を与えるとすれば“持続可能”という言葉なので、そんなことはすでに知っていたかもしれない。

自社製品に“持続可能”というラベルを付けるということは、競合他社の製品は持続可能ではないことを暗示している。これが何を意味してるのかは大抵の場合かなりあやふやである。おそらく、競合他社の製品は今のまま使い続ければいずれなくなる材料から作られているという意味だろう。

善人として通常マスコミに取り上げられる環境保護主義者たちが競合他社よりも一般的に環境に良い製品や方法を表す言葉として使い始めた。すぐにマーケティングの専門家たちがその言葉を取り上げて、いまや歯磨きから音楽から不動産まで“持続可能”として売られている。

それは注意を促す人々が使う言葉なので、とても効果的で人気がある。自社製品を持続可能と呼ぶことは実際にはその製品そのものについては何も言ってない。他社の製品が持続可能ではないという警告のベルを“持続できない! 世界の終わりだ!”と鳴らしているだけである。まるで自社製品は“憎しみなし”とか“残酷さなし”と呼んでるのと同じである。自社製品をまったく説明していないし、単に他社の製品を密かに侮辱しているだけである。人々はポジティブな表現よりネガティブな表現の方が効果があることは、どのマーケティングの専門家も認めるだろう。

この言葉の醜い使い方の一例として独占的に有機栽培の作物に使われる“持続可能な農業”がある。世界人口の3分の1が死んでもかまわないなら、有機農業は持続可能だ。持続可能という言葉を使う他の人々と同じように、有機栽培の食物の支持者たちはその食物についてまったく何も説明せず、近代農法は環境を破壊して涸渇すると思わせて“持続可能”ではないと怖がらせている。皮肉にも、真実はほぼその反対なのである。近代のかけ合わせ品種はローテーションが必要になるまでに何回も連作ができるように特定の土壌に合わせてしかもその土壌が涸渇しなにように作られていてる。与えられら条件でよく育つように合わせて作られた作物を植えるのに比べて、いわゆる持続可能な農業は実際にはかなり持続不可能なのである。

“有機”という言葉そのものも他の作物がまるで有機でないかのように思わせようとする人をだますようなマーケティング方法である。厳密に言えば、その言葉の意味の本来の定義によれば、すべての植物と動物は有機なのである。あやふやな流行言葉で定義されている商品を見かけたら、懐疑的になりなさい。

持続可能な車の燃料についてもよく耳にする。これは有限の資源である天然の石油の代わりに再生可能な資源からできているということから通常バイオディーゼルとエタノールを意味する。原料となる植物をいつでも育てて製造することができるのでバイオディーゼルとエタノールはガソリンに比べて確かに持続可能である。ただし致命的な欠陥がある。ガソリンと同じように、車の燃料としてバイオディーゼルやエタノールを燃やすことによってもっとも影響のある温室効果ガスである二酸化炭素を空気中に排気する。たとえ明日すべての車をバイオディーゼルとエタノールに切り替えたとしても、最終的には必ずしも良いことにはならないのである。バイオディーゼルとエタノールの製造は持続可能でも、その使い方はまったく持続可能ではないのである。これは“持続可能”という言葉を聞いたときになぜ懐疑的な態度を持つ必要があるのかを示す良い例である。環境保護主義者は本当に地球の健康を思ってバイオディーゼルを推薦しているのか? それとも政治的、経済的、哲学的な動機があるのか?

持続可能という言葉はあまりにも普及してきて、その使われ方がバカげてることもよくある。コルゲートは持続可能な歯磨きを作る会社を最近買収した。その歯磨きには骨粉が含まれている。賢い人間が本当に骨粉を使う以外に持続可能な方法がないと思うだろうか?

持続可能な観光旅行もあちこちで宣伝されている。大抵の場合、呼び物としてはアマゾンのような未開発の旅行先について記述してある。パリや東京のような開発された旅行先で休暇を取るのは本当に持続不可能なのだろうか?

持続可能な経済に至っては特に奇怪である。その言葉をグーグルで検索すれば、資産の分配を指すのに多く使われていることに気づくと思う。共産主義が資本主義よりも持続可能であることが証明されたとでも言いたいのか?

著名な自動車雑誌が4台の“持続可能なスポーツ・セダン”を最近テストした。その4台の車は同じような他の車に比べて本当に燃費が優れていて(実際たいして優れているわけでもない)本当に持続可能に製造できる唯一の車種なのか?

持続可能な音楽もまたインターネット上の至る所に存在する。一例として、その言葉は音楽家が自分の楽器を自分で作ることを意味する。“持続可能”がそれを記述するのに本当に最適な言葉なのか? 他人が作った楽器を演奏することは持続可能ではないのか? 他の例として、その言葉は反企業主義の曲を指す。それ以外のテーマで持続して音楽を演奏することは本当に不可能なのか?

持続可能な不動産を提供するウェブサイトもある。その中の二つ家はトウモロコシの芯とわら束で作られている(ウソであって欲しいが本当の話)。わたしだったらそれがどのくら持続可能な建物なのか三匹の子豚の話に出てくるオオカミに聞いてみる。

本当に持続可能な方法を使うことが良いことであることには間違いはない。無限に繰り返すことができるような方法を達成させることが大切で、それがそもそも本当の持続可能性を意味する。本当の持続可能性は熱力学の法則に反することになるが、そこまで効率の良い持続可能性の心配はまだ必要ない。持続可能性は良い目標なので、意味のない流行言葉として失われないで欲しい。それ故に、その言葉が誤解を招くような大衆文化的な使われた時には本当の環境保護主義者が誰よりも先に異議を唱えるべきだ。その言葉を聞いたら、懐疑的になりなさい。本当に何を言おうとしているのか、本当の動機が何かを、判断しなさい。“持続可能”と箱に書いてあるからといって冗談でも骨粉入りの歯磨きを買わないで欲しい。

Brian Dunning
ブライアン・ダニング

参考
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