飛行機内での携帯電話の使用

スケプトイド #14
2006 年 12 月 15 日

今日は飛行機で高度4万フィートまで上昇して携帯電話をオンにしてトワイライトゾーンに電話をかけて死ぬほど危険なはずのことをしているんだと言ってやることにする。

わたしはミスバスターズが大好きだしわたしの家族全員も好きな番組だが、飛行機の中での携帯電話の使用禁止に関するエピソードに関しては根拠なく実施されている携帯電話の使用禁止がなくなって欲しいと望んでいるわれわれに損害を与えた。そのエピソードを見てない人のために説明する。彼らはそれをテストして携帯電話が飛行機のナビゲーションシステムに影響を与える可能性があると結論した。彼らが唯一テストした計器は VOR と呼ばれる電波方位探知機だけだった。その計器は地上基地からの電波を検知してその方向を示す。実際には、VOR は GPS に取って代わられつつある。VOR 基地は VHF 周波数帯の 108 MHz から 117.95 MHz までの間のそれぞれ固有の周波数を割当られている。その周波数帯はちょうど FM ラジオの周波数帯の上にあたる。それとは対照的に、米国の携帯電話が使う最も低い周波数帯は 700 MHz である。ヨーロッパの携帯電話は 450 MHz である。周波数があまりにも違うので、実用上は論争全体がその時点で終わるのである。ところが、ミスバスターズは広い周波数帯を受信できるように調節できる古い VOR 受信機を使ったので携帯電話の信号を検知することができたのだ。責任感を持って放送するならば、使われた周波数は飛行機が実際に受信する範囲から大きく離れていることを彼らは認めるべきだった。それをしなかったので、視聴者に不正確で人騒がせな印象を与えた。ミスバスターズはそれを“あり得そうだ”と呼んだ。それは違うのである。それは実際にはあり得そうではない。携帯電話は実際に使われている飛行機のナビゲーション機器に影響しないのだ。これについては後で詳しく説明する。携帯電話を GPS に思いっきり投げつけたら、何かを壊すことはできるかもしれない。

害がないならなぜ飛行機内での携帯電話は許されていないのか? 実際の理由は FAA(訳注:連邦航空局)は何の関係もなくて、FCC(訳注:連邦通信委員会)から来ている。それは安全性や保安性とはまったく関係ない。7〜8マイル上空で携帯電話を使うと、何百もの携帯電話中継基地局と通信して問題を起こすと想像されている。9/11 事件でハイジャックされた飛行機から携帯電話で家族に電話をした人たちがいることから分かるように、携帯電話は上空からでも問題なく使うことができる。それにもかかわらず、FCC は接地していない民間航空機内で携帯電話を使うことを違法とすることを制定した。わたしは一般航空機内で携帯電話を何回も使ったことがあるが問題があったためしがない。RTCA と呼ばれる非営利団体は FAA のための連邦政府顧問委員会で、彼らのレポート DO-235A “電波の GNSS(訳注:衛星測位システム)への影響の評価”の中で携帯電話は航空機の安全性に危険を与えないという発見を詳細に述べている。FAA の唯一の法律は FCC の法律によって支持されているのである。

ボーイングやエアバスは物理的電気的もちろん携帯電話も含むあらゆる攻撃に耐えられるように彼らの飛行機を常に鍛えている。もし携帯電話が飛行機を危険にさらす可能性があったとしたら、ダイナマイトを持ち込むのと同様に携帯電話も持ち込みが許されることになる。つまりそんな可能性はまったくないのである。

離陸着陸時に使うことが許されていない携帯電話以外の機器(PDA、ビデオゲーム、iPod、ラップトップ)は、FAA や FCC の規制ではない。これは RCTA の文書 DO-233 “機内に持ち込まれる携帯可能な電子機器”に記載されている。これらの規則は航空会社が勝手に作った規則で法的根拠はない。飛行機は航空会社の物なので、彼らが自由に規則を作る権利がある。しかし、それらの機器を使ってはいけないという法律はないしそれらの機器が安全だという調査結果もあるということを知っておいて欲しい。次に飛ぶ時は、コメント・カードにこのことを書いて提出して欲しい。

フライトアテンダントが規則を説明を聞いていると、携帯可能な電子機器や携帯電話が飛行機に危険をさらすことに軽く触れるようにトレーニングされていることが明らかだ。指導教官がそれを信じているしフライトアテンダントもそれを疑問に思う理由は何もない。もしあなたがどうして 1.5 ボルトの LCD パームパイロットが危険なのか不思議に思ったとしたら、あなたは良い考え方をしている。ありえそうもないことを耳にしたら、懐疑的になりなさい。

結局のところどういうことなのか? 黒服の男が秘密裏に航空会社の取締役会を訪れて企業献金を渡す代わりにわれわれが破壊の間際にいるということを説得するための政府の悪徳計画を支持するように約束させているとでも言うのか? 被害妄想で用心深い無知な政策立案者がすべての航空会社にいるのか? そういうのはちょっと陰謀論っぽいのでわたしの趣味ではないが、それぞれ少しは真実である部分もあるかもしれないとも思う。

2004 年 3 月にマドリッドで起きた電車爆破テロを例にとってみよう。携帯電話は容易に入手できて信頼性があるので、爆弾は携帯電話を使って起爆された。その対応の一つとして、爆破可能なところすべてで携帯電話の電波を妨害することを即座に実施するという提案だ。ありがたいことに今のところ実際には実施されていない。空港、国立記念物、スタジアム、駅。これは論理的な対応だろうか? そうではない。もし爆破犯が携帯電話を使えなかったとしたら、レディオ・シャック(訳注:どこにでもある街の電気屋)で買った小型トランシーバを使っただろう。もし彼らがそれも使えなかったら、起爆装置に接続した機械仕掛けの手巻き時計を使っただろう。もしそれすらも使えなかったら、ゆっくり燃える導火線を使っただろう。爆弾を起爆するには何百万通りもあるので、いくら法律を作ってもそれを止めることはできない。合理的な人ならこれを理解できるだろう。不幸にも、われわれの政治的正さと人騒がせな人と責任ヒステリー文化は政府が何かすることを要求する。一般文化はそれが論理的かどうかや効果があるか知らないし構いもしない。われわれの文化は政府が子守りをしているということを知ることで安眠できるのだ。一般大衆の感情を満足させれば、政府は幸せな国民を持つことができるのだ。オサマ・ビン・ラデンは彼の計画を台無しにされて絶望して彼の衣類を引き裂いたりしてないとわたしは保証する。アメリカ人はボトルに入った水を機内に持ち込むことすら許されてないのだから。それは役に立たない不便な法律だが、政府が配慮しているということを現すし、保護されていると感じるために必要ならわれわれの文化は進んで所持品検査されたり切詰めさせられる。

機内での携帯電話使用禁止はこういった例の一つだとわたしは思う。危険性があるらしいということを政府が人々の知識に植え付けて養って、それを利用して子守りをする機会を作っている。言っておくが、わたしが陰謀論者でないことは約束する。わたしは被害妄想の反政府論者なんかではない。しかし、不条理な機内での携帯電話利用の禁止を説明する方法はわたしには他に考えられない。もしあなたが説明できるならウェブサイトでのコメントを歓迎する。

Brian Dunning
ブライアン・ダニング

参考
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